ズ19 ズッコケ三人組の推理教室
第19巻。1989年7月刊です。
探偵ものです。第2、第8巻に続く3度目。
この巻の探偵団は、三人だけでなく、女の子、クラス1のカワイ子ちゃんが加わります。彼女は張り込みにまで参加します。時代の流れですね。「ちょっと男子ぃー、へんなことしてないで掃除してよぉー」の女子はもういないわけです。
この点に懐古趣味の不満を感じなくもないですが、事件の発生と展開は相変わらずです。探偵活動の発端が、猫の捜索なのです。日本史上、結成された少年探偵団のほぼ八割が、ペットの捜索を当初の目的としていることは、各方面の研究によって明らかにされているところですが、この巻のお話も、そのマジョリティに沿っているわけです。
ところで。猫の捜索と言えば、79年刊の『SOS地底より』という大名作を思い出す向きもあるでしょう。さっきネットで検索してみると、なんと品切れだか絶版だかで、現在は流通していないそうです。ナメられてますね、今の子。各家庭に常備され百年読み継がれるべき名作がもう売ってないんですって。ズッコケと同じ版元です。了見を測りかねる暴挙と言えます。
この巻のお話に戻ります。ハチベエらの捜査も虚しく、荒井陽子ちゃん宅の猫失踪事件はあっけなく解決します。拾って面倒をみていた男が、タウン情報紙『ミドリ情報』のお尋ねを見て届けてくれたのです。
で、ここからが本当の事件です。『SOS地底より』が猫発見によって地底洞窟が明らかになったように、このお話では、詐欺事件が明らかになります。
荒井家では猫を届けてくれた男に、保護した後の猫の食費医療費として請求されるまま十万円を払っていたのですが、同様に失踪猫の送り届けの際に金銭を要求された家が他にもあることが分かったのです。金を受け取った男は同一人物らしい。さらに、購入したペット店と、飼い主が『ミドリ情報』に投書したことが共通しているのです。つまり自作自演の誘拐詐欺事件というわけです。なんと地元の代議士宅まで被害を受けます。さすが代議士、被害額は庶民の倍の二十万。
ここで改めて探偵団が組織され捜査が開始されます。絞りに絞り出された推理によって、ペット店と『ミドリ情報』関係者に容疑の目が向けられます。同時に、次の被害候補宅の張り込みも行われます。……はたして犯人は現れるのか?自演の証拠は?……タイトル通り、知力と機転が光るストーリーでした。
タイムスリップものと違って、探偵ものはまだまだ高水準が維持されているようです。
なお、勉強の役に立たない作り話(物語や小説)を読まないことにしていたハカセが、この巻の冒頭でシャーロキアンに変身するのは、鈴木和代ちゃんから『緋色の研究』すら読んでないのかと嗤われたことがきっかけでした。図書委員として読書指導の必要もあり、探偵と推理の世界に入っていき、そして出られなくなったわけです。
ここでも示唆されている通り、図書館、少なくとも学校図書館は、探偵と推理へ誘う力において価値を発揮すべき場所なんです。あのハカセに百科事典を手放させる磁力。
ということで、日本中の図書委員諸君ならびに児童書のある図書館司書のみなさん、すぐにも『SOS地底より』を補修しガッチガチにフィルムで補強してください。ズッコケとホームズは刷られ続けますが、これはもうこの世に何冊残っているかわからない貴重な本なのです。美品は千冊もないのではないでしょうか?うち1冊は僕の実家にあります。本日家宝に昇格しました。
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