ズ25 ズッコケ三人組の未来報告
未来のお話です。
時は二〇XX年、三人組は三十二歳です。
小学校を卒業してから二十年、三人ともそれなりに社会に出て活躍しており、はじめてのクラス会が行われます。しかし、会で開封される予定だったタイムカプセルが、何者かによって盗まれてしまいます。折りしも、国籍年齢等一切が謎の当代一の世界的スター、ジョン・スパイダーの初来日公演が間近に控えていました。スパイダーが長らく拒んできたのを翻意し、待望の来日が実現することになったのですが、東京や大阪ではなくなんとミドリ市で公演を行うのです。カプセルは会の直前に返されますが、ある人物の記念品だけが取られています。現在では高価値のついた「カラテマンゴールドカード」ではなく、なぜそんなものが抜き取られたのか。犯人は誰なのか。そしてスパイダーはなぜミドリ市に来るのか。……未来を舞台にした大掛かりなお話です。
書き忘れましたが、このお話は夢オチで終わります。全部夢でした、ということです。オチというより、最初から読者にはほとんどわかるように書かれています。モーちゃんがヨーロッパでホテルマンの修行をし、フランス人女性ジャクリーヌ(美人)さんと結婚しているなんて、まあ、夢としか思えません。
で、歳をとった未来の三人組といえば、このブログのゴールである『中年三人組』です。そのシリーズ完結作を予め模倣したかのようなこの第25巻なのですが、かなり大きな作風の変化が起こっています。何かが吹っ切れたような感があるのです。シリーズ全体を通して見た場合、この巻は大きな転換点を示すことになるでしょう。
おそらくこの頃に、ここをシリーズの中間とすること、すなわちここで折り返してこれまでと同じくらいのお話が作られることが決まったような気がします。あと二十巻あまり続くことを見越したうえでの変化が見られるのです。
三人組のキャラクターが後退し外部が前景化してきました。
三人組・出来事・外部キャラの三者のうち、後の二者がずっと前にせり出してきたのです。三者は等価になったか、あるいは逆転しているかもしれません。主である事件に対して三人組が従の関係をとっているように見えるのです。
これまではどんな事件が起ころうとあくまで三人組の世界が前提でしたが、その巻かぎりの現場と事件と登場人物が先行し、そこに三人組がいるという形に転じてきたのです。三人組があいかわらず三人組らしくあることを確認するために本を開く読者ではなく、ストーリーの行方を追う楽しみを欲する読者に向けられているかのようです。
エンターテイメント性が強くなったとか、筋立てが派手になったと感じる人もいると思います。シリーズが固定して続くようになれば、敵役の方に焦点が移りバラエティを増すことは、宇宙怪獣やジオン軍にも見られる通例ですが、これを同様のマンネリ回避策といってはミもフタもないでしょう。三人組が、誕生時には想定されていなかった時間と世界を生きはじめているということだと思います。短い半ズボンの小学生はもう絶滅しており、何らかの転換は必要だったはずなのです。坂本金八氏が長髪を切り体重を増やした時期を考えれば、ここまでよくもったものです。
今後は、ドラえもんの七巻以降を読むような、コメカミが打てなくなってからの矢吹ジョーを見るときのような気分になることでしょう。本当にこの巻までしか未だ読んでないのであてずっぽうなのですが、たぶん、ズッコケは変わりました。21巻で言及した変化よりずっと腹のすわった変化です。この巻を読みながら薄々と感じ、次巻のタイトルを知って確信しました。七十年代末に誕生し八十年代初頭に花開いた三人組が、九十年代に適応していく様を、これから追体験していくわけです。いつまでも過去のテイストに拘泥するなと、ジャクリーヌ(美人)さんが言ってるようでした。
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