ズ27 ズッコケ三人組の大運動会
運動会のお話です。
ここしばらくの傾向から、フォークダンスをめぐり男女がもめるとか、調子づいたハチベエがクラスの女子から総スカンをくらう話を想像しがちですが、全くちがいます。
謎のアスリート仮面も登場しません。
久しぶりの、男しか登場しない巻なのです。男同士の心の葛藤、友情、そして兄弟愛が主題でした。
お話は、運動会を二ヵ月後に控えた夏休みに、銀行員の宮下さん一家が花山町に引っ越してきたところから始まります。この宮下家の二人の子、中学生と小六の兄弟が、そろって俊足なのです。一方、ハチベエも毎年徒競争でトップをとっており、密かにオリンピックも夢見ているほど足に自信を持っています。
学校が始まり、宮下弟とハチベエが運命のライバルのように出会います。グラウンドを並んで走ったうえに、宮下弟が中学校で陸上をしている宮下兄と毎日特訓をしていることを知ったハチベエは、小学校最後の運動会に危機感を募らせます。モーちゃんとハカセをつれて宮下兄弟の早朝特訓を偵察するハチベエ。しかし、これが揉め事のきっかけになってしまいます。宮下弟は、三人をスパイだと思い込んだのです。何者かの依頼によって中体連の大会に出る兄の様子を探っていたのだという誤解です。
怒りに燃えた宮下弟はついにモーちゃんを殴打。ハチベエよりもハカセがこれに憤慨するのですが、悪いことが重なります。組み体操の練習中、崩れ落ちる事故で宮下弟が入院するほどの怪我をしてしまうのです。宮下弟はハカセが故意に組み体操の山を崩したと誤解してさらに怒りを増す始末。
ここで宮下兄が、弟の、兄を慕いすぎる故の思い込みと、それが招いた摩擦を知ります。弟が入院するなか、三人組のコーチ買ってでる宮下兄。運動会断念のみならず兄の行動にもショックを受ける弟。次第にあきらかになる兄弟の歴史、そして運動会の当日……
こういう展開です。兄弟の関係、転校生としての気負い、スポーツ自慢のせめぎ合い……いろいろつまっています。
と、宮下兄弟とハチベエらがメインストリームなのですが、一方でハカセが裏主役ともいえる鈍い光を放っています。まるで運動が苦手な読者にとって、「体育」的なものや運動会との関わり方を示唆しているようです。卑屈にならず、かといって無理に気張りすぎず。苦手なものもマイペースで当たる姿勢は、運動会を控えた子に大いに参考になるでしょう。また、すぐに人を殴る乱暴者から理不尽な恨みを持たれたときの振る舞いも魅力的です。気の小さい子にとっては一生忘れないほどの印象を残すかもしれません。ただホンワカと開き直っているモーちゃんには示せない姿勢です。
さらにもう一つ、この巻には珍しい利用価値もあります。
宮下兄が三人組をコーチする場面が、そのまま徒競争上達法として読めるのです。かなり実践的で有効なコツがいくつも出てきます。運動会での活躍を狙う子らにはなによりの指導書にもなることでしょう。ここで示されることに気をつけて練習すれば数段のレベルアップが期待できます。なんせハカセですら二等、万年最下位のモーちゃんが三等になれたのです。走者が片っ端からこけるというハプニングもあったのですが。
最後に。知将ハカセが考案した騎馬戦必勝法を紹介します。
その1。特殊な帽子を用いる。つばの部分だけを厚紙にしてひっぱられるとそこだけ取れるようにする。
その2。帽子にビニールで透明なアゴヒモをつけて脱げにくくする。
以上。
ハカセよ……。
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