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2008年7月24日 (木)

ズ27 ズッコケ三人組の大運動会

Back27第27巻。93年7月刊です。

運動会のお話です。
ここしばらくの傾向から、フォークダンスをめぐり男女がもめるとか、調子づいたハチベエがクラスの女子から総スカンをくらう話を想像しがちですが、全くちがいます。
謎のアスリート仮面も登場しません。
久しぶりの、男しか登場しない巻なのです。男同士の心の葛藤、友情、そして兄弟愛が主題でした。

お話は、運動会を二ヵ月後に控えた夏休みに、銀行員の宮下さん一家が花山町に引っ越してきたところから始まります。この宮下家の二人の子、中学生と小六の兄弟が、そろって俊足なのです。一方、ハチベエも毎年徒競争でトップをとっており、密かにオリンピックも夢見ているほど足に自信を持っています。
学校が始まり、宮下弟とハチベエが運命のライバルのように出会います。グラウンドを並んで走ったうえに、宮下弟が中学校で陸上をしている宮下兄と毎日特訓をしていることを知ったハチベエは、小学校最後の運動会に危機感を募らせます。モーちゃんとハカセをつれて宮下兄弟の早朝特訓を偵察するハチベエ。しかし、これが揉め事のきっかけになってしまいます。宮下弟は、三人をスパイだと思い込んだのです。何者かの依頼によって中体連の大会に出る兄の様子を探っていたのだという誤解です。
怒りに燃えた宮下弟はついにモーちゃんを殴打。ハチベエよりもハカセがこれに憤慨するのですが、悪いことが重なります。組み体操の練習中、崩れ落ちる事故で宮下弟が入院するほどの怪我をしてしまうのです。宮下弟はハカセが故意に組み体操の山を崩したと誤解してさらに怒りを増す始末。
ここで宮下兄が、弟の、兄を慕いすぎる故の思い込みと、それが招いた摩擦を知ります。弟が入院するなか、三人組のコーチ買ってでる宮下兄。運動会断念のみならず兄の行動にもショックを受ける弟。次第にあきらかになる兄弟の歴史、そして運動会の当日……
こういう展開です。兄弟の関係、転校生としての気負い、スポーツ自慢のせめぎ合い……いろいろつまっています。

と、宮下兄弟とハチベエらがメインストリームなのですが、一方でハカセが裏主役ともいえる鈍い光を放っています。まるで運動が苦手な読者にとって、「体育」的なものや運動会との関わり方を示唆しているようです。卑屈にならず、かといって無理に気張りすぎず。苦手なものもマイペースで当たる姿勢は、運動会を控えた子に大いに参考になるでしょう。また、すぐに人を殴る乱暴者から理不尽な恨みを持たれたときの振る舞いも魅力的です。気の小さい子にとっては一生忘れないほどの印象を残すかもしれません。ただホンワカと開き直っているモーちゃんには示せない姿勢です。

さらにもう一つ、この巻には珍しい利用価値もあります。
宮下兄が三人組をコーチする場面が、そのまま徒競争上達法として読めるのです。かなり実践的で有効なコツがいくつも出てきます。運動会での活躍を狙う子らにはなによりの指導書にもなることでしょう。ここで示されることに気をつけて練習すれば数段のレベルアップが期待できます。なんせハカセですら二等、万年最下位のモーちゃんが三等になれたのです。走者が片っ端からこけるというハプニングもあったのですが。

最後に。知将ハカセが考案した騎馬戦必勝法を紹介します。
その1。特殊な帽子を用いる。つばの部分だけを厚紙にしてひっぱられるとそこだけ取れるようにする。
その2。帽子にビニールで透明なアゴヒモをつけて脱げにくくする。
以上。
ハカセよ……。

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2008年7月20日 (日)

ズ26 ズッコケ三人組対怪盗X

Back26第26巻。92年12月刊です。

ちょうど全巻の折り返しにあたる巻ですが、絵の描き手が変わっています。
お亡くなりになったそうです。……

小学生、とくに読書習慣がしっかりとしていない子は、たいてい表紙やペラペラとめくって見た絵で、読む本を決めます。理解を助けるだけでなく筋を追う気をを奮わせるのも、挿絵です。誰でも、お話の中身は忘れても表紙だけは憶えている本がいくつもあるでしょう。ポッペン先生とかマガーク探偵とか、僕は絵しか憶えていません。本当に、小学生の読む本にとって、画のウェイトはかなりの割合だと思うのです。
このズッコケもしかり。氏の絵がいったい何百万人の心の中で、ズッコケのズッコケ性を印象づけ定着させたことでしょう。改めて本を開かなくてもすぐに思い浮かべられる挿絵がいくつもあります。僕はとくに、各章の始めにある小さなカットが大好きでした。そればかりを編んだ画集が出版されてもいいくらい味のある絵です。
ズッコケシリーズにとっては大打撃だったことでしょう。当時の状況やシリーズ続行をめぐる経緯や裏話など知りもしないし調べる気もないのですが、この巻以降は「原画」としてクレジットされていくことになった、その初代ズッコケ絵師の偉大さは、多くの元小学生と同じく僕も理解するところです。悼。

お話の内容に入ります。
前巻で、ズッコケは大胆な転換=エンタメ化を敢行したと書きましたが、いきなり大きくでました。「怪盗X(エックス)」だそうです。
ただの怪盗ではありません。前半部で実際に言及があるのですが、「怪人二十面相」のキャラクターをそのまま踏襲したような怪盗なのです。大物が登場しました。ある意味、あの古典シリーズ(もちろんエログロ乱歩ではなく学校図書室にある方の乱歩)への挑戦とも受けとれます。新生ズッコケへの意気込みを感じさせるキャラといえるでしょう。
さしずめ三人組が小林少年の役回りということになります。
お話は、日本中を騒がせている怪盗X(エックス)が、ミドリ市に現れるというものです。花山第二小の四年生の女の子の家にある国宝級の茶器に狙いをつけるわけです。
ネタバレは避けますが、乱歩シリーズが苦手な子にも二十面相のおもしろさが味わえるような、オトクなお話でした。
怪盗Xが、誰もが知る怪人二十面相の三大特徴をきっちり備えているのです。
その1、人を殺傷しない。基本的に怪盗は紳士なのです。怪盗と探偵は知恵比べをするわけで、ゲームは知的で華麗に遂行されなければいけません。
その2、変装しまくり。顎の下に手をやってベリッと剥がすあれです。怪盗の素顔を知るものはいません。変幻自在は怪盗の嗜みのようなものです。
その3、逮捕されてもすぐ逃げる。古今東西、怪盗はしばしば逮捕されます。でもすぐに逃げるのです。奇術師のように手錠をはずすとか、予め仕込んでおいた装備で空を飛ぶとか、よくある場面です。
そうです。怪盗Xも逃げるのです。
なんとこの怪盗、シリーズになってこれからもたびたび登場するらしいです。
「諸君、また会おうフハハハハ」ってなもんです。また会いましょう。

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